矢羽田家住宅
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(概要)                              .
 屋根の形に特徴がある「くど作り」形式の矢羽田家住宅は県内で唯一現存するものとし
て非常に貴重である。東大山小五馬にあつた旧矢羽田家住宅は、現在はふるさと資料館横
 に移築し保存される国指定重要文化財である。

(文献)
東大山小五馬にあつた旧矢羽田家住宅で、現在はふるさと資料館横に移築し保存してい
る。屋根の形に特徴がある。すなわち峰が「コの字」となり前に谷のある前谷型の「くど
作り」形式で、この形式の民家としては分布上もっとも東に位置している。
 民族文化圏でいえは筑後川沿いの範囲を示す例でもある。ただし、同じ「くど作り」で
も佐賀県内に分布しているものとは形式が異なり、福岡県や熊本県に分布しているものと
同じく、土間と居室を別棟とする平行分横形式から変化したとも推定されている。建築年
代は十八世紀前半ごろと推定されている。ちなみに矢羽田家の位牌の中で最も古いものに
は享保二十年(1735)の年号がある。
 間取りは左手に間口四・五間(約4.5メートル)に奥行六間(約10.8メートル)のニワ
(土間)をとる。前半部の天井は竹スノコで、上はツシ(天井裏の物置場)として使用す
る。右手にはゴゼン(十五畳)とナカエ(十二畳)が前後に並ぶ。南部屋ともにイロリを
切る。ゴゼンの奥には角屋根で出したザシキ(入畳)、ナカエの奥には六畳のネドコと三塁
の物置がある。計五間取りである。また、ニワの最奥部にはクドを設置し、ニワとゴゼン
の間は屋根の継目で、大きな樋が通っており、この部分にトイノマハ樋の間)の呼杯があ
る。
 かつてこのような形式の家が何軒か見られたといい、この形式の家を指して「舟並び」
と呼んでいたという。くど造り形式の民家としては県内で唯一現存するもので、非常に貴
重である(昭和五十七年六月十一目国指定重要文化財指定)
 敷地内には、田中長者の夫婦がその上で悲惨な死を遂げたという民話の「長者石」があ
る。
出典
大山町史