一尺八寸山(みおやま)のお話

 昔、日田盆地をとりまく山の中には、シシや、シカなど、たくさんのけものがすんでい
た。
 ところが、盆地の東の方の有田という村には、よその村よりたくさんのけものがすんで
いて、野山をかけめぐり、近くの山から出てきたイノシシは、田んぼや畑を荒らしまわる
ので、村人たちは、すっかり困ってしまった。
 困ったのは村人だけでなく、お殿さまも因ってしまった。
 田畑を荒らされると村人たちの取り入れがへつてしまい、殿さまに年貢がおさめられな
くなるからです。
 そこで、ある日、殿さまは、シシ狩りをすることにし、家来たちを大人数引きつれ、け
ものたちのすんでいる山を、いく重にも取り巻き、ホラ貝を吹くやら、鐘や太鼓を打ちな
らすやら、ときの声をあげるやら、それはもう、静かな山は時ならぬ騒ぎになった。
 やがて、シシ狩りの騒ぎもおさまり、しとめた獲物は、ウサギやシカ、イノシシ、山ど
りと、それはみごとなものばかりだった。
 その中でも、ひときわ人目をひく大イノシシ三頭を、本陣にあてられた庄屋さまの庭先
によこたえ、酒をくみかわしながらの皆の手柄話は、今日一番の大物だった三頭の大イノ
シシのことになった。
 殿さまのいいつけで三頭のイノシシのシッポを切り取り、つなぎ合せて計ってみると、
なんとまあ、長さが「一尺八寸」もあった。ところで、一尺八寸といえば、ほぼ68セン
チぐらいのことです。
 それからというもの、村のひとたちは、三頭の大イノシシのいた山のことを「一尺八寸
山」と書いて「三尾山」つまり「みおやま」と、よぶようになったということです。

出典
「日田地方の昔ばなし」(NTT日田電報電話局編集委員会)