月出山岳

(概要)
 日田盆地の東方、玖珠盆地とを分ける高原台地にそびえる月出山岳は形の整った山で、名実とと
 もに日田市を代表する秀峰である。この山の頂上は、東西に三つのピークが連なり、中央のピーク
 が日田市と玖珠町の境となっている。

(文献)
 月出山岳は日田盆地の東方、玖珠盆地とを分ける高原台地にそびえる。日田盆地からは、四方に
長くのばした山すそが良く見え、美しい山の姿から「日田富士」と呼ばれている。日田盆地を囲む
山の中では、最も形の整った山で、名実とともに日田市を代表する秀峰。
『豊後国志』は「月出山」と書き、「カントヤマ」と読んだ。さらに、「山在郡東。先見出光。故名」
 とあるように、日田盆地にかかる月はこの山から昇る。また、二つの盆地を分ける台地に突きでた
 ようにそびえる山(ツキデヤマ)、という意味もあるようだ。
 これが月出山岳に変わり、「カントウダケ」と呼ぶようになった由来の話はいくつもあるが、いず
れも日田盆地から見て、美しい月がかかるこの山と関東の方向が同じであることにちなむ。
 この山の頂上は、東西に三つのピークが連なり、中央のピークが日田市と玖珠町の境となってい
 る。玖珠町にある東側のピークが最も高く、そこに三角点がある。
 東の玖珠町側のふもとに雲上高原が広がり、南は鏡山、北は高戸台へ続く。そして、月出山岳の
山すそ一帯の日田と玖珠の盆地を分ける高原性の台地には、かつてふたっの盆地を結ぶ街道が通っ
ていた。街道の難所のひとつが代太郎峠だ。玖珠川沿いに国道と鉄道が開通する前までは、峠に茶
屋もあったという。ふもとの古老から、米俵を馬車に積んで峠を往来した苦労話を聞く。
 また、代太郎峠を西側に下ったとっころに、真鶴妾葺議張巌がまつられている。難関の峠を越
え、旅の安全を祈って、ここに地蔵尊が建立され、乳地蔵として信仰された。今は大変にぎわい。
様々な祈願の張り紙が、幾重にもお堂を埋めている。
 この山には日田側と玖珠側から登れるが、どちらもマイカーを利用する方が便利だ。日田側登山
 口である岩下からの道は、登山者の減少とともに道が荒れて歩きづらい。
 家族連れの場合は、玖珠側の朝見から登る方がよい。集落の北側の高台にある朝見牧場まで車でい
ける。
 クヌギ林の急坂に造られた林道を登り詰めたところが朝見牧場入り口だ。車を降りると、正面に
月出山岳がそびえている。東側の山すそ一帯が牧場で、美しい草のスロープを見せている。牧場を
通りぬけて、草の斜面のどこを歩いても良い。牧場からひと登りだ。
 草原の山頂だけに展望は良い。東には玖珠盆地ごしに玖珠の山々が重なり合い、遠く九重の山並
に連なる。眼下に台地が広がり、そのはるか西方には日田盆地と、盆地を囲む山々を望める。
 玖珠郡玖珠町。日田市 709メートル

出典
日田郡の文化財