矢野家伝

(概要)
「矢野家伝」は、日田の湖水伝承や老松神社の起源、大山町の起源などが記されており、
真偽の程は確実ではないにしろ、地域の文献として貴重かつ興味深いものである。全六巻
からなる。

(文献)
「タ滞翫」は、篭智五年の橘氏嵯峨門の序を巻頭に、「日田郡開起巻一 矢野熊五郎吉
孟集撰」「大蔵氏系脈巻二 熊五郎吉孟集録」「矢野家伝秘巻三吉孟集録」「矢野家伝秘巻
四 吉流編録」「矢野家伝秘巻五 吉流編集」「矢野家伝秘巻六 嵯峨門撰」の六巻から構
成されている。

 序によると、日田郡は蘭蘭以来鬼神家二十六代を経た後、大友氏が相続し、郡内は益々
平和である。この両時代を通じて、坂本・高瀬・財津・羽野・石松・堤・佐藤・濾戸口は
八奉行といわれる郡老であったが、矢野氏も郡老と同じく政治に参加していたということ
は知られていない。それは、八奉行は郡底=日田盆地に居住し、矢野は大山の部賎に居住
していたことによるという。
 津江氏の所有する「盛講乱は矢野家伝について、巻頭に日田郡司職鬼神家縁起を述べ
ているが、地神何代の後胤と説明せず、非常に省略したものであるので、偽書であると極
めつけている。そして日田郡内にある家伝は、それぞれの大祖は不明となっているので、
矢野家の祖、「土(くに)太夫先頭」の記録を中心として矢野吉孟が書き改めたものであ
ると述べている。

 ともあれ矢野家伝には、日田の起こり(湖水が澗れて日田盆地が出現したという伝承)
や老松神社の起源、大山町の起源などが記されており、興味深い内容になっている。特に
てんしょう
天正十七年の検地内容は、同年の検地実施の裏付けとなる県下唯一のものであり、無視
できない。

 いづれにせよ、一家伝にすぎない本書が、少なくとも安土桃山時代からの記録が現存し
ているという事実は非常に興味深く、地域の文献としては大変貴重な存在である。

出典
日田郡の文化財